Kitchen Science's Memorandum

YouTubeチャンネル”Kitchen Science”の動画で伝えきれなかったことをつらつらと書いてまいります。

「圧力鍋で丸ごとオニオンスープ」の補足その1 ~冬にも新玉ねぎが食べられる?~

こんにちは、ほりけんです。
この記事は「圧力鍋でまるごとオニオンスープ~物質の三態と温度・圧力の関係~」の動画の内容を補足する内容となっています。
動画を未視聴の方は、先にこちらをご覧ください。


【時短・簡単】圧力鍋でまるごとオニオンスープ~物質の三態と温度・圧力の関係~【圧力鍋の仕組み】

新玉ねぎといえば、この時期にしか出回らない、安くておいしい春の野菜の代表格。
そんな新玉ねぎが、冬にも食べられるようになるかもしれない、という話を聞いたこ都がある方はいらっしゃるでしょうか。

そもそも新玉ねぎとは

新玉ねぎと普通の玉ねぎ(いわゆるヒネもの)の一番大きな違いは、収穫後の処理方法にあります。
通常玉ねぎは保存性を高めるため、収穫後1か月ほど乾燥させた後出荷されます。
一方新玉ねぎは、収穫されてからすぐに出荷されるため、瑞々しい状態が保たれるというわけです。
その分新玉ねぎはとても痛みやすいので、お店で買ってきたらできるだけ早く使い切ることを心がけましょう。

また、通年店頭に並んでいる玉ねぎは「黄玉ねぎ」と呼ばれるもので、春にも秋にも収穫ができます。
一方新玉ねぎとして食べられているものの多くは「白玉ねぎ」で、こちらは春に収穫されます。新玉ねぎがこの時期にのみ食べられるのはこの違いもあるようです。

冬に食べられる新玉ねぎ

しかし、冬に収穫される白玉ねぎの品種が、近年ついに開発されました。それが「シャルム」です。

 

 今のところ「新玉ねぎ」として(収穫後乾燥せずすぐに出荷して)販売されている例はあまり見られないですが、近い将来、甘くて柔らかい新玉ねぎが春以外にも食べられるようになるかもしれませんね。

収穫時期をずらす技術

多くの野菜・果物には旬があり、一年の中で限られた時期にしか収穫できません。

それに対して、「一年中美味しいみかんを食べたい!」といったような消費者のニーズに応えるため、あるいは農閑期における収入源とするため、本来のものと収穫期をずらす様々な技術が開発されています。

先に挙げた白玉ねぎの「シャルム」のように、栽培サイクルが異なるような品種開発はその一つです。

このパターンの他の作物の例として思いついたのは、ちょうど今の時期、初夏の頃に食べられるみかん「南津海」です。

またヒネものの玉ねぎのように、貯蔵技術を確立することで長期間の出荷が可能になっている作物もあります。玉ねぎの他にはりんごが代表的な例と言えます。

(もっと言えば「産地サイクル」という概念も組み合わさることで僕たちは一年中玉ねぎやりんごをスーパーで買えるのですが、この話はまたいずれ…)

また温度や湿度、照度といった栽培環境をコントロールすることで収穫を本来の時期とずらすという方法も一般的です。日本人にとって馴染み深いのは、温室で育てるハウスみかんでしょう。寒くなる時期に温室によって気温を上げることで、普通のみかんとは半年ほどずらし、夏にも出荷することができるのです。

今はまだ限られたものにおいてのみですが、人間が完全に季節をコントロールできるようになるのも、そう遠くないかもしれませんね。

 

参考文献

農畜産業振興機構「これからが旬、新玉ねぎ!」(https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000788.html

磯島昭代・木下貴文・山本淳子「冬季における生食用新タマネギの消費者ユーステスト」(東北農業研究 70,115-116 2017)