Kitchen Science's Memorandum

YouTubeチャンネル”Kitchen Science”の動画で伝えきれなかったことをつらつらと書いてまいります。

とろける生姜焼きの補足その1 ~水溶き片栗粉、火を消してから入れるか?付けたまま入れるか?~

こんにちは、ほりけんです。
タイトルで出オチ。

この記事は「片栗粉でとろける生姜焼き 〜デンプンの性質〜」の動画を補足する内容となっています。
動画をご覧になっていない方は、先にこちらからご覧ください。


【白い粉再び】片栗粉でとろける生姜焼き 〜デンプンの性質〜【料理 × 科学】

 

さて、今回の動画では、水溶き片栗粉でうまくとろみをつけるコツについて、でんぷんの性質に基づいて解説しました。
しかし、水溶き片栗粉を入れる際に火を消すか付けたままか、というポイントについてだけは、明言を避けました。
これはどちらにもメリット・デメリットがあり、動画内で話すと長くなりすぎてしまうためです。
というわけで、今日はこちらの記事で、それぞれの方法について詳しく解説できたらと思います。
今回焦点を当てるのはこのポイントのみですので、前回と違ってサクッと読めるものになっている…はずです。
それでは本文をどうぞ。

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そもそもダマとは

まずは動画内でもお話した、片栗粉でとろみが付くメカニズムの復習を。
片栗粉の主成分であるデンプンが柔らかい状態になる(糊化)ためには、水と熱が必要なのでした。
温かい料理に固まった状態で片栗粉をいれると、周囲から徐々に糊化するため、一部分に留まり柔らかい塊になります。これがダマです。

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ダマができる過程のイメージ図


片栗粉を水で溶いてから入れるのも、水溶き片栗粉を加えてから良くかき混ぜるのも、できるだけ片栗粉を分散させることが目的です。一様に分布した片栗粉が糊化することで、均一にとろみがつくのですね。また片栗粉を入れた後に加熱を止めると、糊化が部分的にしか起こらずうまくとろみをつけることができません。

ここからが本題です。入れた後は加熱するとして、水溶き片栗粉を入れる瞬間は、火を付けていた方がいいのでしょうか。それとも消してから入れて、再度火を付ける方が良いのでしょうか?

火を付けたまま入れると

動画内ではこちらの方法を採りました。

火にかけられたまま、すなわち熱せられた料理に水溶き片栗粉を入れると、糊化がすぐに始まります。この手早くとろみをつけられるというのは一つの利点です。

また冷めた料理に水溶き片栗粉を入れると、糊化が起きなかったデンプンが鍋の底に沈殿することがあります。
そこに熱が加わると、底に溜まったデンプンが糊化し、ダマになることが考えられます。
加熱しながら水溶き片栗粉を加えることで、そのようなダマの発生を抑えることができます。

火を消してから入れると

では、火を消してから入れる方法のメリットは何でしょうか。

水溶き片栗粉を入れるとすぐ焦げてしまう、という方には、火を消してから入れることをお勧めします。
片栗粉はほとんど純粋なデンプン、すなわち炭水化物であり、非常に焦げやすいものです。火が強すぎる、
あるいは片栗粉を溶いた水が少ない、といった場合、火をつけたまま水溶き片栗粉を入れると焦げてしまうことがあります。一度火を止め、水溶き片栗粉を入れてかき混ぜながら火を付けることで、焦げ付きのリスクを低下させることができます。

また火を止めた状態だと糊化がゆっくり進むため、かき混ぜる時間の猶予ができ、ダマになりにくい、ということも考えられます。加熱されている鍋の一部分に集中して水溶き片栗粉を流し入れると、それが塊のまま糊化しダマになってしまうことがあります。火を消してしっかりかき混ぜてから火を付けることで、そのようなダマの発生を抑えることができるというわけです。

 結局どっちが良いの?

他のホームページや本をいくつか見てみると、どちらの方法を勧めるものもありました。それぞれ一長一短で、人によって使い慣れた方法を採っているということでしょう。
大まかにですが、料理初心者向けには火を消してから入れる方法、プロっぽく手早く仕上げるには火をつけたまま入れる方法がそれぞれ紹介されている傾向が見られるように思います。

どちらにおいても、「鍋に入れる前にしっかり水に溶く」「鍋に入れる際は一か所に固まらないよう回しかける」「鍋に入れた後は加熱しかき混ぜ続ける」という3点は共通しています。
水溶き片栗粉を使ってとろみをつける際は、まずはこれらのポイントを気にしてもらえれば良いのかなと思います。
その上で、もし今まで火を付けたまま水溶き片栗粉入れていて、とろみをうまくつけられなかった、という方は、次からは逆に火を消してから入れてみてください。

とろみ付け以外にも、何かうまくいかないな…と思うことがあれば、その原理から考えてみると良いかもしれませんね。